Microsoftのビジネスはクラウド戦略に傾注しつつあり、生産性ツールにおいても「Office Perpetual(パッケージやバンドルといった売り切り型の永続ライセンス)」より「Office 365」を重視している。直近でもこうした戦略を反映した発表があり、一部で話題になっているので紹介したい。

●Outlook.com Premiumの一部機能をOffice 365に統合

それは、MicrosoftのWebメールサービス「Outlook.com」における変更だ。Hotmailの後継として2012年にスタートしたOutlook.comだが、この有料版である「Outlook.com Premium」の一部機能がOffice 365のサブスクリプションに統合されることとなった。

米Microsoftは10月30日(現地時間)、「Office 365 Home」と「Office 365 Personal」のサブスクリプションを契約するユーザーが、Outlook.com Premiumで提供されている機能の一部を利用可能になったことを報告している。数週間かけてローリングアウトしていくという。

これらのコンシューマー向けOffice 365を契約しているユーザーアカウントであれば、(Office 365に含まれる)Outlook.comの利用時に「Inboxでの広告排除」「マルウェア/フィッシング用の拡張プロテクション」「大容量メールボックス」「プレミアムサポート」を利用可能になるという。Outlook.comを利用するメリットは、カレンダーやコンタクト先との連携にあり、Windows 10の音声対応アシスタント「Cortana」との相性もよい。

セキュリティ面では「添付ファイルとリンクのチェック」という機能がOffice 365に加わり、メールボックスは無料版の15GBという容量が50GBまで一気に拡張される。10月30日時点で12GB以上のメールボックスを持つOffice 365ユーザーは自動的に50GBまで容量が拡大されるという。

ここまではうれしいニュースだ。

●Outlook.com Premiumは新規受け付け終了

一方、問題を一部で指摘されているのは、Microsoftが同時に公開したサポート文書だ。「Outlook.com Premium closed to new subscribers」というタイトルからも分かるように、Outlook.com Premiumの新規ユーザー受け付けを終了したことを報告している。2016年にパイロット版として立ち上げ、2017年2月に正式版に移行したばかりだった。

実際、現在Outlook.com PremiumのページにアクセスしてもOffice 365サブスクリプション契約への誘導リンクが表示されるだけで、Outlook.com Premiumでのサービス内容の確認や契約は行えない。

新規受け付け終了前に同サービスで提供されていた機能には、前述のOffice 365での新規特典に加えて、次のものが含まれていた。

・カスタムドメインで最大5ユーザーに対して5つのパーソナライズされたメールアドレスの提供
・ドメインは米GoDaddy経由で年間10ドルの追加コストで導入可能(初年度は無料)
・既にドメインを所持している場合、この追加コストはかからない

つまり、Office 365のサブスクリプションを契約すれば、Outlook.com Premiumで提供されていたメリットの多くは享受できるが、カスタムドメインとパーソナライズメールアドレスに関してはその限りではなく、こうした機能はOutlook.comを新規に利用するユーザーに提供されないという。

Microsoftによれば、既存のOutlook.com Premiumユーザーのサポートは「現時点では継続される」とのことで、この有料アカウントを更新し続ける限りはカスタムドメインの機能も利用可能なようだ。ただし、この表現は「今後サポートを終了する可能性が高い」ということを示唆しており、該当するユーザーは可能な限り早いタイミングでOutlook.comからの移行を検討した方がよい。

同社では現在、他のサービスプロバイダーへドメインを移行できる方策について検討しており、この仕組みを利用したいユーザーにはドメイン制御やパーソナライズアドレスを有効化するためにも、サブスクリプションを維持してほしいと通知している。

●信頼性に関わるクラウドサービスの内容変更

今回のOffice 365での新機能の話はコンシューマー向けのユーザーを対象としたもので、エンタープライズ版や中小企業版を契約するユーザーには直接関係ない。

ただし、この変更はヘビーにOutlook.comを利用していたユーザーほど影響が大きいと推測する。以前に容量無制限プランの解除と無料版での容量減少を実施した「OneDrive」の話題でも触れたが、日々利用しているクラウドサービスを他のサービスへ移行(脱出)することは非常に難しく、これがユーザーをつなぎとめる要素の1つになっている。

一方、散々プロモーションなどでユーザーをつなぎとめておきながら、急な戦略変更やビジネスが曲がり角に来たことで、いきなり突き放すというのは心証が悪い。文面から察するに、米Thurrott.comのポール・サーロット氏はこれに該当するユーザーの1人だと思うが、その憤りぶりが伝わってくる。クラウドカンパニーを掲げるMicrosoftにとって、OneDriveに次ぐような悪手を打つことは避けるべきだ。

 

 

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